動脈の血管は、ゴムのようにしなやかで、中の表面は滑らかにできています。
しかし、年齢とともに、動脈は老化(硬く、もろい状態)していきます。
一般的に男性は30歳前後から、女性は閉経後から始まるといわれています。
動脈硬化のパターン
動脈硬化には、大きく2つのパターンがあります。
- 1. 血管の中がデコボコに盛り上がって、狭くなるパターン
- 2. 血管が硬くなるバターン
血管が狭くなる動脈硬化
血液中の血糖やLDLコレステロールが高いと、血液はドロドロになり、血管内の壁が傷つきます。
傷ついた壁から、LDLコレステロールが入りこみます。
そうすると、貪食細胞(マクロファージ)が、たまったLDLを食べて掃除します。
しかし、たくさん食べすぎると炎症物質を出しながらいろんな細胞が集まって脂肪の塊を作り、血管の内壁を押し上げていきます。
さらに血管は押し上げられて徐々に狭くなり、血液の通りを悪くします。
押し上げられたニキビみたいな塊がやぶけた時に、壁を修復しようとかさぶた(血栓)を作ります。
血栓が大きくなり過ぎて血管を塞いで、血流を止めてしまうと、急性心筋梗塞や脳梗塞となります。
出典:トーアエイヨー、インフォームドコンセントのための
心臓・血管病アトラスより抜粋
特に糖尿病、LDLコレステロールが非常に高いと、狭くなる動脈硬化が進みます。
血管が硬くなる動脈硬化
健康的な血管は、ゴムのようにしなやかな弾力性を持っています。
しかし、高血圧などで過度に血管が伸展されると、血管の筋肉や線維にカルシウムが沈着する「石灰化」が起こり、血管が石のように硬くなっていきます(動脈硬化)。
動脈硬化の状態が進むと、血管が伸び縮みしにくくなってしなやかさがなくなり、血流によるダメージを受けやすくなります。
動脈硬化になるとどうなる?
血管が狭くなることで、血液をいろいろな臓器に送ることが出来なくなったり、血管が破れたりして多くの病気を引き起こします。
- 急性心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 脳出血
- 頸動脈狭窄症
- 閉塞性動脈硬化症
- 大動脈瘤
- 大動脈解離
- 慢性腎臓病
- 腎硬化症
- 腎血管性高血圧
- 網膜症
- 虚血性腸炎
- 脳血管性認知症
- 性機能不全(ED)
などなど、他にも多数あります。
動脈硬化にならないためには?
原因は、生活習慣病である高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、内蔵型肥満症、運動不足、アルコール摂取などです。
お薬も大事ですが、食事や運動の改善がとても大切です。
自分の出来そうなところから、無理せずに開始して、周囲の人たち(ご家族や医療従事者)にサポートしてもらうことも大切となります。
動脈硬化の症状は?
動脈硬化で血管が脆くなったり狭くなったとしても、出血がなく血液が十分に流れていれば症状は出ません。
症状が出る時は、血圧の異常、または下記の3つのパターンのときです。
血圧の異常
下の血圧(拡張期)が高くなる症状
心臓から遠く離れた手足の血管が動脈硬化によって細くなると、血液が流れにくくなり下の血圧が高くなります。
お薬を飲んでも血圧が下がらない症状
腎臓は血液の流れが悪くなると、それを感知して血圧を高くする物質を分泌します。
腎臓に血液を送る血管が狭くなった場合も、腎臓は血液が足りないと勘違いして血圧を高くする物質を分泌してしまいます。
血圧のお薬の作用機序によっては、この物質の分泌を抑えることができないので、血圧が高いままになってしまいます。
3つのパターンとは?
- パターン1: 臓器に十分な血液を届けられない場合
- パターン2: 血管が突然破れ、その後血栓で急に閉塞する場合
- パターン3: 脆くなった血管が壊れる場合
パターン1: 臓器に十分な血液を届けられない場合
血管が狭くなり血流が低下した結果、臓器に必要な酸素や栄養の血液を届けることができず、臓器が悲鳴を上げてしまった状態
- 狭心症
何かの動作をきっかけに、胸が圧迫されたり締め付けられる症状が出ます。 - 閉塞性動脈硬化症
歩いた時に、足が重い・だるい症状が出ます。
パターン2:血管が突然破れ、その後血栓で急に閉塞する場合
動脈硬化で狭くなっている血管部分が、突然破けて、その後血栓で急に閉塞する状態
- 脳梗塞
突然、手足が動かしにくくなったり、喋りにくくなる症状が出ます。 - 急性心筋梗塞
突然、胸が締め付けられる、圧迫される、左肩が重くなる、奥歯が痛くなる症状が出ます。
パターン3:脆くなった血管が壊れる場合
脆くなった血管部分が壊れた状態です。
- 脳出血
突然の頭痛、吐き気、物が2つに見える、手足が動きにくいといった症状が出ます。 - 急性大動脈解離
冷や汗を伴う胸の痛みや背中の痛み、裂けるような背中の痛みなどが症状として出ます。
などが典型的な症状の例です。
動脈硬化の原因とは?
動脈硬化が起こりやすい人の特徴は?
動脈硬化の原因
動脈硬化の原因は、糖尿病、脂質異常症、喫煙、高血圧、運動不足、内蔵型肥満、アルコール摂取などです。
糖尿病
糖尿病で血糖値が高いと血管の内壁を傷つけ、さらに血管の中の筋肉などの部分にも石灰化を起こして動脈硬化を進行させます。
脂質異常症
脂質の中でも、特にLDLコレステロールが非常に高いと、内側にコレステロールがたまり、動脈硬化を進行させます。
HDL(善玉)コレステロールは、血液中のLDLコレステロールを回収します。
HDLコレステロールが低いとLDLコレステロールを回収できず、LDLコレステロールが高くなり、動脈硬化を進めます。
中性脂肪が高いと、直接的に動脈硬化を進行させることはないですが、LDLコレステロールを高めて、HDLコレステロールを低くします。
結果的に、動脈硬化を進行させます。
禁煙の開始と発症リスクの関係
タバコを吸うと、タバコに含まれる成分が交感神経を刺激します。
交感神経が活発になると、血管を収縮させて血圧が上がり血管の内壁を傷つけます。
さらに、タバコの中に含まれる活性酸素も血管の壁を傷つけます。
その結果、血管の壁に炎症が起きて動脈硬化を進行させてしまいます。
喫煙者の方の動脈硬化の発症リスクを、今までタバコを吸っていない方と同じ程度に戻すには、禁煙を開始してからそれぞれ以下の年数がかかるとされています。
- 脳卒中の場合、5年
- 肺がんの場合、10年
- 急性心筋梗塞の場合、15年
高血圧
血圧が高いと、血管の壁を過度に伸展して血管の壁を傷つけて炎症を起こします。
過度に伸展した血管の筋肉にも影響を及ぼし、カルシウムが沈着(石灰化)して血管を硬くします。
運動不足
有酸素運動とは、酸素を必要とする運動です。
有酸素運動をすると、血流が良くなるので、血管の内側の壁の働きが活性されて、丈夫になり、しなやかになります。
運動不足によって、血管の機能が落ちて壁が傷つき易くなり、動脈効果が進みます。
内蔵型肥満
内蔵型肥満は、お腹に脂肪がたまる肥満のことを言います。
「レプチン」という食欲を抑えるホルモンは脂肪細胞から分泌されます。
レプチンは脂肪が増えると、たくさん分泌されて食欲を抑えて太らないように働きます。
しかし、肥満によって内臓脂肪が多くなりすぎると、レプチンが効きにくく、食欲を抑えることができなくなります。
食欲を抑えられなくなると血糖値が高くなったり、コレステロール値が増えて血液がドロドロになります。
その結果、血管が傷つき動脈硬化が進行します。
アルコール摂取
お酒を習慣的に飲み続ける過度の飲酒していると、LDLコレステロールを高めてしまう中性脂肪が増加します。
また、血圧も高くなり、動脈硬化を進行させます。
現在の動脈硬化の進行度がわかる検査
動脈硬化がどのくらい進んでいるかをチェックできる検査があります。
脈波検査
全身の血管の硬さと、動脈硬化によって手足の比較的太い血管の狭さがわかります。
血管年齢もわかります。
また、閉塞性動脈硬化症の診断にも有用です。
首の血管(頸動脈)超音波
脳に血管が分布している頸動脈を超音波で検査することで、どのくらい動脈硬化が進んでいるかわかります。
脳梗塞のリスクが発見できる場合もあります。
お腹の聴診
お腹を聴診器で音を聴くと、動脈硬化で狭い場所があると血液の流れの乱れが起こるので、血管雑音としてわかります。
腎血管性高血圧の診断の手がかりになることもあります。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。